「フリースタイルダンジョン」の人気が、すごい。
かつてのボキャブラ天国のように、ここから売れたラッパーがバラエティ番組で司会をする時代が来ないものか。ラッパーって「MC」なんだから、本来そうあるべきだよね。
フリースタイルダンジョンとは
Zeebraがオーガナイザーとなって(ry
ってつい言いたくなるけど、簡単にいうと、テレ朝で火曜の深夜1:26から放送されている即興ラップバトルの番組。毎週の放送は、公式アカウントから毎週YouTubeにアップロードされるので、眠い人はこちらでチェックしてほしい。
ラップに興味のない友達が、よく「先週のフリースタイルダンジョン見たよ!」って報告してきてくれる。嬉しそうに報告してきてくれてこっちも嬉しいんだけど、「○○見たよ!」って普通、出てる人に言うセリフだよね。出てないから!
たぶん、ラップに興味がない人にしてみたら、「ラップを見た」という行為自体がもう、ラップをしている人に報告したくなるほどの経験なんだろう。それぐらい、ラップに興味がない人とラップをやっている人の間には、壁があったということならば、こういう番組をいろんな人に注目してもらえるのは、とても嬉しい。出てないけど。
韻がわかればもっと楽しい
せっかくこんなにみんなに見てもらえる番組ができたんだから、この中で踏まれている韻を解説したい。あくまでも初心者向けに「韻」だけを解説するので、すでにラップに詳しい人は、
- いやそんなこと知ってるわ何を今さら
- いやフリースタイルって韻だけがすべてじゃないしフロウとかバイブスとかサンプリングとか(ry
みたいな批判は無しでお願いします。
せっかくなので、最新の動画で解説したい。先週の放送分。長いので、時間ない人は18:00〜あたりから見てもらえると嬉しい。
18:09あたりからの、ACEのターン。
え?3000万人はファンがいますマニア?
何それ?どこ?
パプアニューギニア?タンザニア?
まず、その直前にDOTAMAが「ラッパーだったら3000万人はファンがいますマニア」と言ったのをそのまま受けて「ますマニア?」と「タンザニア?」で踏む。ここから、
タンザニア?
分からねぇなお前が犯罪者
いや違ぇなサンバイザーでも
付けてればいいけど
今日はACEくんに負けてうぇ〜完敗だ
南無阿弥陀(なんまいだ)
分かるか?俺の3枚刃
違ぇなこれがサンバイザー
お前スキル足んないな
と続ける。韻を踏むとは、母音を合わせること。 赤で書いた部分はすべて母音が「あんあいあ」になっていることに注目してほしい。これが「韻を踏む」ということ。
ちなみに、最初に「いますマニア」と言ったのはACEではなくDOTAMAのほう。それを起点に「それどこ?タンザニア?」と受けて、その「タンザニア」からこれだけの韻を繰り出す。すごすぎる。
さて、それを受けてのDOTAMA、この韻が使いまわしということを指摘して攻撃したあと、最後(動画の18:35あたりから)こんな風に言い放って自分のターンを終える。
知るかよお前の通訳としての能力なんて
こいつのラップ タカタカタカタカ情緒不安定
俺のほうがブチ上げてくDOTAMA
まるで反町隆史 やばし
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ
つまり俺のラップ 猛毒なんです
さて、いきなりですが、ここで問題です。
DOTAMAはなぜ最後、「言いたいことも言えないこんな世の中」と言ったあとに「ポイズンなんです」と言わず、「猛毒なんです」と言ったのでしょう?
正解は、
能力なんて
情緒不安定
猛毒なんで
で韻を踏むため。この三つはすべて母音が「おうおうあんえ」になっている。
DOTAMAがすごいのは、「能力なんて」「情緒不安定」まではいいとして、そこからいきなり「猛毒なんです」に持っていくのは繋がりが悪いと感じたのか、その間にワンクッション入れること。そしてもちろんこのワンクッションの間にも韻を仕込む。
まず相手のラップの仕方をdisる「タカタカタカタカ」という擬音から「隆史(たかし)」を連想させ、さらにその「隆史」と「やばし」で踏んだあと、自分の名前である「DOTAMA」とポイズンの「世の中」でもさりげなく踏む。 その結果、
知るかよお前の通訳としての能力なんて
こいつのラップ タカタカタカタカ情緒不安定
俺のほうがブチ上げてくDOTAMA まるで
反町隆史 やばし
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ
つまり俺のラップ 猛毒なんです
という、韻が複雑に絡み合ったバースが完成する。
聞いている側の気持ちとしてはこんな感じ。最初、「能力なんて」「情緒不安定」ときて、「もういっちょ「おうおうあんえ」がくるかな?」と期待してしまう。そこで、次の小節で話が反町隆史の話が始まり、少し裏切られた気分になる。
そのまま「隆史」「やばし」の3文字踏みで韻としてのクオリティが下がってドキドキする。このまま負けてしまうのか?という不安がよぎる。すると、「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ!」と強めの口調で「DOTAMA まるで」と踏んできて、「おっ!まだいけるか?」と再び期待してしまうと同時に「でもあと一小節しか残ってないぞ」と心配する。
しかしその心配をぶっとばす、最後の小節で「猛毒なんです」が炸裂。言いたいことも言えないこんな世の中じゃ俺のラップこそが猛毒なんだ、という結論を出すとともに、最初に貼った「おうおうあんえ」の韻の伏線を回収する!
結果、この勝負、DOTAMAの勝利。
これを、全部即興でやっている。こんなことを一瞬のうちにして頭の中で考えるのが、フリースタイルの醍醐味。
まとめ
HIPHOPの文化もいいけど、こういった知的な側面も、 いろんな人に伝わるといいなぁ。(テレ朝さん、せっかくいろんな人に見てもらってるんだから、韻を踏んでる箇所だけテロップで色を変えたりしてわかりやすくできないですかね?)
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